塩酸ベースの洗剤で黒く変色したシンクの復元
近年、ステンレスシンクの変色を起こした、焼けてしまった等のご依頼が多く寄せられております。
明らかに一昔前とは数が違います。
一昔前と違うのは、YouTubeの動画サイトやSNSで、塩酸でシンクをクリーニングする情報がはびこっているからでしょうか。
「水垢には酸性成分が有効です」と宣伝し、そこで手軽に帰るサンポールの登場。
ここで塩酸ベースであるサンポールの紹介。
サンポールは塩酸濃度9.5%で主に水垢、尿石に効果があります。
水垢と言っても種類がございます。
水垢の種類は大きく分けて2種類。
蛇口回りなどに白くカリカリした頑固な水垢。
こちらはカルシウムスケールという水垢。
もう一つは濡れると目立たないが、乾くと浮き出てくるモヤモヤした水垢。
こちらをシリカスケールと言います。
さて、塩酸ベースのサンポールはどちらの種類の水垢に有効かと言うと…
答えは前者のカルシウムスケールに有効です。
カルシウムスケールは固形的で貝殻、歯石もカルシウムとなります。
尿石は尿に溶け込んでいるカルシウム、リン酸、シュウ酸等が水道水のミネラル成分と結合した結晶なんですね。
尿石は蛇口回りのカルシウムスケールに比べ更に頑固な物質です。
なのでカルシウムや尿石除去に効果がある強酸性の塩酸が、トイレ洗剤として抜擢されるんですね。
サンポール自体は悪い洗剤とは思いません。
臭いは個人的に気になりますが…
酸性成分の性質
元々酸性成分は金属を腐食させる力を持っております。
中でも塩酸は強酸性で、金属を腐食させるスピードが早いです。
因みに長年、それこそ何千回とステンレスシンクを磨いてきましたが、塩酸をシンクに使用した事は1度もございません。
なぜなら上記で述べた通り、塩酸ベースの洗剤は金属を腐食させるスピードが早く、リスクが高いからです。
でも私がステンレスシンクに塩酸ベースの洗剤を使用しない最も大きな理由があります。
それはシンクの底面、側面にはカルシウムスケールがほぼ付着していないからです。
シンクでカルシウムスケールで悩まされた事は記憶にないですね。
我々プロクリーナーは塩酸ベースの洗剤より比較的優しいリン酸ベース、スルファミン酸ベースの洗剤が手に入ります。
かといってこれらの酸性洗剤もシンクには余り多用しません。
それは大した回復が見込めないからです。
それは少しくらいはカルシウムスケールも混ざっている可能性もありますから、塗って全く硬化が無いのか?と言えば少なからずあるとは思いますが。
その程度であれば、クレンザーで磨いた方が安全で楽に除去できてしまいます。
シンクの主な汚れはタンパク質の汚れとシリカスケール(もう1つの水垢)がメインとなります。
タンパク質の汚れはアルカリ洗剤で洗えば概ね除去できます。
シリカスケールは塩酸やリン酸を当てても、なんら回復の見込みはございません。
即ち、塩酸はステンレスシンク磨きにはハイリスクでローリターンとなります。
ステンレスシンク再生方法
さて今回のシンク。
大切に使用されてたのか、傷もほぼない状態。
水垢だけを取り除こうとサンポールを使用されたそうです。
やはりプロのお掃除屋さんが発信した動画サイトやSNSを参考にされたそうですよ。
黒く変色したシンク。
多くの業者は粗目のパッドから研磨工程を重ねて復元を目指すかと思います。
シンクの状態からその方法は取りませんでした。
私が取った復元方法は2種類のクレンザーと超微粒子のパッド。
これらをツールとして、後は手に伝わる感覚とテンションで感じ取ります。
復元した画像がこちら。30分以内で仕上げました。
塩酸によるダメージがを受けながらでも、2種類のクレンザーでここまで復元できるレベルであれば、1工程目からクレンザーでも十分だったシンクの状態でしたね。
それだけお客様がシンクを日頃大切に使用されていた証だと思います。
結論
塩酸は悪い成分ではございません。
使い処で素晴らしい効力を発揮します。
ただし、これは塩酸に限らずどんな素材にどんな汚れが付着して、どんなケミカルが適切かを見分ける必要がございます。
個人的意見ですが、仮に塩酸を薄めたとしても水垢を除去する力が劣るだけで塩酸そのものの性質は一緒です。
塩酸を薄めて使用するくらいであればリン酸やスルファミン酸の方が良いかと思います。
ただ、一般の方々には中々手に入らないリン酸やスルファミン酸。
それであれば簡単に手に入る粉クレンザーや半練りのクレンザーがとても使いやすいかと思いますよ。
住まいの日常手入れもローリスクハイリターンで行きましょう♪